2013年4月5日金曜日

空が灰色だから_5巻

「空が灰色だから」5巻。これで最終巻。終わり。THE ENDであります。

あー終わっちゃったよ。ちょっと一言では語りつくせないですね、こいつは。

こんな強い印象を残して颯爽と駆け抜けて行った漫画があろうかしら。

インパクトの強さはわりと個人的に歴代ベストクラス。このね、人事とは思えないほど読み手に強力な感情を喚起させる作風。何かサプリメント的な作用が科学的に仕込まれているんじゃないかと疑うほどです。

実際はアクの強い絵柄と、まったくそれに負けないストーリーの面白さ、ちゃんとした理由に裏付けられた腰の座った作品であったと思います。

それにしても、絵柄で統一されているように見えるけどこれほど、バリエーションに富んだ作風をごった煮にして一つの作品にぶち込める作者の懐の広さは相当なもんだなぁ、と。厳しい見方をしちゃえば、3巻ぐらいで大体のバリエーションは出尽くして、あとはその変奏と言ったところもない訳ではないですが、それにしたっても、幅は相当広い。と言うか、惜しげもなく懐晒し過ぎな感があって、読んでる方が心配になることもしばしば。

一般的なプロの漫画家なら、次の作品までこのネタは取っておこうとか、普通考えそうなもんですけど、この人の場合、「この作品と心中するから、ネタを取っておくつもりは無い!」みたいな無軌道な勢いを感じてそれがまた読んでる方としてもテンションが上がると言いますか。若干の怖い物見たさもありつつ最期まで目が離せなかった。

 とにかく、最終話。「歩み」。

相当キテマス。

最後の最後にこれを持ってくるのが「空灰」ですよ。素晴らしい!素晴らしすぎて泣くね。もう、本当に泣ける。最後のシーンにかぶさるモノローグのなんという息苦しさ。胸が締め付けられて、叫びだしたくなる。出来るのなら、漫画のコマの中に飛び込んで、二人を元気付けてあげたくなる。

生きていくうえで避けて通ることの出来ない、苦しい気持ちがある。読者のそんな気持ちを、「歩み」のなかの二人は全て引き受けてあの時空で苦しみ続けている。

生贄として。

おかげで、読者は想いを昇華出来る。少しだけ肩の荷が軽くなるような気持ちを得ることが出来る。

でも、あの二人はどうなるんだ。未来永劫、あのコマの中に閉じ込められて苦しみ続けててる。本を開いたときに、何時でも読者に”この気持ち”を思い出させる為に。

ずーっと、そこに居る。


  poverty52529 

阿部共実は本当に素晴らしい才能に溢れた(まさに溢れるという言葉が相応しい)作家だし、まだまだ駆け出したばかりなので、これからもずっと追いかけて行きたい。

そう思わせるに十分な「空が灰色だから」最終巻でした。

  空が灰色だから5(完結)(少年チャンピオン・コミックス)空が灰色だから5(完結)(少年チャンピオン・コミックス) [コミック]
著者:阿部共実
出版:秋田書店
(2013-03-08)

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